2017年10月28日土曜日

憧憬が新しい世界に導いてくれたの? あこがれの明清絵画~日本が愛した中国絵画の名品たち~ 静嘉堂美術館文庫 のブロガー内覧会に行ってきた!



久しぶりにブロガー向けの内覧会に行ってきました。
知り合いの美術ブロガーさん達にお会いできたけど夜の予定があるので、早めに失礼したし、行きは珍しくニコタマからバスに乗ったら遅刻してしまい、冒頭の面白そうだったお話はすっとんでいるし、解説も最後まで聴けなかったけど、もう今回は型破りな解説でびっくりしたので、投稿も型破り?でいきます。

尚、会場写真は主催者の許可を得ての撮影であり、通常会場での写真撮影は不可となっております。(不出来な写真なので、される方は居ないとは毎回思っておりますが、転載もおやめくださいね。)

型破りな解説って何?ですよね。ま、型破りってほどではないけれど、なかなか、ぶっ飛んでましたので、最初にツイッターで呟いたのは・・・

16:22 - 2017年10月28日
コバンザメ商法の下心があると認める館長の話が面白い ▶︎あこがれの #明清絵画〜日本が愛した #中国名画 いや、中国絵画の名品たち〜 #ブロガー内覧会 なう ▶︎辻先生が言ってるんだから若冲が明清絵画情景あるの間違いないらしい ▶︎初公開の虎図が元 #美術館に行った 
会場風景


何に乗っかったかというとチラシの上に踊る言葉「若冲、応挙、谷文晁も、みんな夢中になった」の「若冲」は昨今のブームに乗っかった事をあっさり認めた河野館長だったのです。若冲に関しては、「夢中になったかどうか」について核とした証拠となる作品はありませんが、若冲発掘?の大御所辻先生の著述の中にそれと読めるものがあるとか、有名な筋目描きのように輪郭線のない描き方の作品が 李日華さんの《牡丹図巻》にみうけられるとか(これは会場で東京大学東洋文化研究所・情報学環教授の板倉先生―後述がおっしゃっていたと思います)、まぁ「こじつけ」れば、色々言える要素はある。。という風に解釈するつもりでございます。

いきなり河野館長の止らない解説の感想をアップしておりますが、先輩だからやりにくい、と言いつつもこれを優しく諌めるが如くに解説を加える板倉先生との掛け合いは、この初日に訪れた方なら先着順で参加できるトークショーの一部です。列品解説でも11月11日と12月2日、7日、14日に河野館長のお話も聴けるようですから、参加できる方は是非聞かれるといいかと思います。
   11月11日(土)11:00~ ゲスト:塚本麿充氏(東京大学東洋文化研究所 准教授)
    12月2日(土)   11:00~ 河野元昭館長
    12月7日(木)・12月14日(木)何れも14:00~ 河野元昭館長
HPの情報 http://www.seikado.or.jp/exhibition/index.html
に触れたので、HPでの解説をまずは御紹介。

深遠な山水から愛らしい猫まで多様な様相をみせる中国・明清時代(1368~1912)の絵画は、江戸時代以降の日本でも多くの画家たちの憧れの的でした。静嘉堂の明清絵画コレクションは、質量ともに国内有数のコレクションとして知られていますが、本展ではその中から、日本の画家に多大な影響を与えた沈南蘋(しんなんぴん)の代表作をはじめ、日本が愛した中国絵画の名品を精選し展示いたします。
この他、HP上では今回の展覧会のみどころとして、
①12年ぶりに明清絵画の優品を一挙公開
李士達(りしたつ)・張瑞図(ちょうずいと)・王建章(おうけんしょう)といった名立たる画家たちによる山水画の名品や、日本の花鳥画に新風を巻き起こした沈南蘋(しんなんぴん)の代表作、また清朝の宮廷趣味がうかがえる華やかな草花の作品等、充実のコレクションをじっくりご堪能ください。
②日本の画家が描いた模本なども共に展示
室町~明治時代にあたる明清時代に描かれた作品は、各時代の日本の画家たちに大きな影響を与えました。本展では、画家たちが実際に見たことがわかる明清絵画と、それを模写した作品・感想などを述べた跋文、愛蔵の文房具等も共に御覧いただきます。彼らが楽しみながら享受していた明清絵画への想いを、実際の作品を通して感じていただきたいと思います。
③書跡の優品も特別公開
王鐸(おうたく)や張瑞図(ちょうずいと)といった、明末清初の個性的な書跡の優品も特別公開いたします。

なのですが・・・
恐らくは、連携企画として六本木一丁目の泉屋博古館分館で開催中の「典雅と奇想 明末清始の中国名画展」(11/3(金・祝)~12/3(日)
https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/
とセットで観ると、より理解が深まるというのもお勧めポイントではないでしょうか。

さて、トークショーとその後にブロガー向けに坂倉先生自ら展示室を回って解説戴いた内容、そして、展示品に添えられた解説から私の感想まで、これから順不同で一気に参ります。

★江戸時代の日本から見た憧れの中国⇒日中の美意識の違い?⇒模写の問題?
    館長から今回の展覧会の中心軸にあるのは、明清のものをそのまま見せるではなく
    中国(舶来)に対する憧れを持っていた日本目線でみた明清絵画である事が披露
 され、日中の美意識の違いを見て下さいというようなお話があったけど、
 のっけから?
   そんな違いを垣間見る事になった気がします。
   坂倉先生が(模本は縮図という形で多くを描いていた狩野探幽が珍しく原寸大の
   模写を下という事からか)「原寸大」である事を強調していた狩野探幽が模写を
   した《山水図》を 描いた張翬(ちょうき)という人は有名な人ではなく、
    雪舟が留学していた頃に活躍していたみたいですが、実際に眺めると静かな風景
    だけど迫力があって、奥行 と筆の勢いを感じますね。
    これに対し、館長が「一生懸命夢中になって熱心に模写している」「フラットな
 感じ」と言われてましたが、やっぱり模写の限界なのかな、
    探幽の《張翬 山水図模本》は、筆の勢いがない(特に人物)と思うんですね。
    それがよりフラット感を高めている気がします。


★名幅中の名幅!
     今回の展覧会のポスターの中心人物、ならぬ猫がクローズアップされているのは
      沈南蘋(しんなんぴん)の《老圃秋容図》の事です。
     吉宗公が長崎奉行を通じ唐船主に中国画を取り寄せるように命じたものの実行
     されず、名画の写しの取り寄せを命じたものの入手困難という事で実現しない
     代わりに、沈南蘋が来日し滞在中に絵を描いたという話を聴くと、なんだ、
    名画以下のレベルの絵しか描けない人物のように 思うし、中国から見れば日本が
    低く見られていたんだろうな、 という切ない思いにもなってしまう訳ですが、
  絵を見ると、当時の中国の画壇の層の厚さと技量の程が窺えるという事なの
 かもしれないなぁという感想。     
     日本(長崎)に着いてから描いたという伝説のような話は、確証がないそうだけ
     ど、少なくとも来日直前か、直後かの作品だったようです。
     いずれにしても、この名幅或いは南蘋の齎した画風に対する熱狂が日本の花鳥画
 を深化させた事には間違いはないようで・・猫の毛描きが見事だという事ですが、
 それは 単眼鏡でじっくりご確認戴くとして、狙っているカミキリ虫?との距離感が
 良い感じ。
     猫が耳をピーンと立てて今にも飛びかかれるぞという体勢なのも緊張感が感じられ
    ていいですよね。


★ 猫の粉本あるよ!
     そしてこの同じ絵をほぼ粗、写し取った谷文晁派の江戸随一の画塾「写山楼」で
      使われた粉本が 最近見つかったそうで、真ん中のガラス ケースの中に(すごく紙
      が白い)鎮座ましましておりました。こちらも原寸大だそうですが、描きっぷりは
      地の色の違いもあってか、色はついているのに白描画とは言わぬまでも あっさり
      した印象。
      例えば朝顔の色は塗られていないし、ところどころ違う印象があるので、本当に
      模本なの?って思ったりもした訳ですけどね。
   (それとこちらの方が視点が近い処からだからなのかな?)

★ 画塾だけでなくて、谷文晁が手掛けた模本もあるよ!
     藍瑛《秋景山水図》と谷文晁《藍瑛筆 秋景山水図》
     模本ならば、全てが一致しているのかと思いきや、やはりそのままでは
     行かなかったのが谷文晁の真骨頂なんでしょうかね。
     画面下部の長さがないだけで、全体のバランスイメージが変わる事は勿論、
     点描のように描く山の表現も少しずつ違うということですけど、どっちが
     日本テイストかと言われてもわかんないよね、正直。
   (比較はHPの展示作品紹介頁に詳しいのでそちらをご覧ください←って
      うまく写真が撮れてなかった言い訳ですが。。)
      http://www.seikado.or.jp/exhibition/constitution.html
     
★下から眺めよう!
   金箋(きんせん)⇒金箔を貼った紙地、
    絖本(こうほん)⇒光沢のある絹地に描かれている
    という違いがあるにせよ、光った地に描くというのは、中国におけるジャポニズム
    という話が出て参りまして、、ほほー。となりました。
《米法山水図》王健章金箋墨画淡彩
《秋景山水図》絖本墨画
その金箋の上に描かれた  を見るときは是非下から 眺めて!という事で、確かに下から眺めると地が光っているのがわかります。
(このあたりは「写真」には 収めきれないところね)
でも隣の絖本の方は正直うっすら程度しか光ってる感しか感じられない ガラスケースの限界。  


     絖本ではないけれど、同じガラスケースには入っていても、目線の近い、#59 
     #60の 山水図扇面》はいずれも金箋墨画(淡彩か濃い目かの違いはあるけど)で、
     ひかひかした感じを楽しめますわ。
#60《山水図扇面》金箋墨画 明時代


★ 平民からのし上がったのに失脚した張端図(ちょうずいと)に
    興味もっちゃうよね?

   書く文字の独特なリズムとうねるような山水図、同じ人物の手になるものとは
   一見してわからないわー。というのが最初の印象。
   成りあがっていた時期は、当然のように時間がなくて、詞の部分は本人作では
   なくて、他人の五言律詩を書いていたという事だけど、「木の葉返し」と言われる
   ような筆の表と裏を使って器用に書かれた書は独特ではあっても、リズム感が
   あって美しい。
右が張端図《草書五言律詩》

   当然書家との認識のあった応挙は、文字の模写をしているそうで、脇にちょろっと
   張端図の絵も落書きのように描いているとか。


張端図 《秋景山水図》と柳沢淇園による跋文(これも絖本)

最初の印象は同じヒトの手になるものとは思えなかった筈の張端図の絵は失脚後に描いたという事なんだけど、段々みていくうちに、文字と同じで濃淡のリズムがあることに気づきました。
なーんだ、どんなステータスにあろうとも、その人の基本って 変わらないんだなぁ。。と妙な納得感がありました。

池大雅による跋文の解説はミニガイドブックに詳しく載っているので、是非お買い求めの上読んでみてくださいませ
★文房四宝蒐集も流行ったんですって
   中国への憧憬は絵や文字だけではなくて、それを生み出す筆・墨・硯・紙
   の蒐集という形でも表現できたようですが、私が気に入ったのは、江戸後期の
   文人画家 浦上春琴の愛蔵品の《双鵞硯》を含む文具一式とそれを入れる箱。
   箱の題字は幕末の志士・文人山中信夫翁、蓋裏は頼山陽の次男の鑑識、更に
   箱側面に可愛い鵞鳥図が描かれているけれど、これが富岡鉄斎というんだから
   贅を尽くしてるなぁ。というか、茶道具とかもそうですけれど、箱書きは勿論
   仕覆とかの生地まで何重にくるんで大切にする昔の日本人の美意識というのか
   その洒脱さというのか、それが凄く好きなんですよねぇ。。(クローズアップ
   した写真は撮れないので、是非会場でじっくりご覧ください。あとミニガイド
   ブックにも写真アップされているから、是非お買い求めください。←回しもの
   のように書いてますが、これほんとお得ですんで。)
右の軸の下にある文房具セットと富岡鉄斎の絵が施されている箱

★ 初公開の《虎図》は若冲に影響与えた?
《虎図》

龍は雲を呼び、虎は風を呼ぶということで、龍虎を描く作品は昔から多いわけなので、この特定の作品が本当に若冲に影響を与えたのかと言われると、いくら解説で毛描きが一定方向でない事が若冲の描き方に影響を与えたと言われても俄かに信じる事ができないのではありますが(すみませぬ)、まぁ、明らかに若冲が学習した元の作品は宋の時代のものだったので今回は展示できなかったという話は信じます。(笑)
 
《花鳥図》
★ 狩野派に影響を与えた《花鳥図》 
一方で、この解説があった日にはまだやっていた(すみません)サントリーの狩野元信の展覧会でも似たような作品があったよね、と解説を聴いて思い出したくらいで、構図とか、選ばれた花鳥のイメージ(あくまでもイメージですね、きっと個別に観ると全く違うかも)がいかにも狩野派的、いや、オリジナルはこちらの方なのでしょうが、に見えてくるから面白いです。
私の中の固定概念がカチコチなのかもしれないけれど。

この他流派の違いや、これまた冒頭に触れた李日華の《牡丹図巻》等の解説は楽しかったけれど、会場内の解説も丁寧なので、先ずは会場に行かれて、どんな絵に当時の日本人が憧れ、マネしようとしたかを見てみるといいと思います。






こがれの明清絵画~日本が愛した中国絵画の名品たち~
静嘉堂文庫美術館   http://www.seikado.or.jp/guide/index.html
会期:2017年10月28日(土)~12月17日(日) 休館日:月曜日
開館時間:午前10時~午後4時30分(入場は午後4時まで) 

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